政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
「大切な両親を悲しませるとわかっていても、それでもあいつと一緒になりたかったのか?」

 深い眠りに就いている凛々子から、答えは返ってこない。

 今は俺の腕の中にいるけど、水族館に向かうまでは不安でいっぱいだった。

 凛々子なら両親を裏切ることをしない、最終的には俺と結婚するはず。そう、高を括っていたんだ。

 でも違った。それほど凛々子はあの男に本気だったのだろう。

 歩道で泣き崩れる凛々子を見た時は、胸が張り裂けそうだった。俺も凛々子をたくさん傷つけてきたくせに、都合のいいことだとわかっている。

 でも思ってしまったんだ。凛々子を傷つけていいのは、俺だけだと。

 凛々子の泣き顔を見て、好きって感情は制御不能となった。

 あれほど素直になれなかったのに、凛々子を早く手に入れたくて無我夢中で想いを伝えた。

 もう二度と悲しい思いをさせたくない。傷つけたことを後悔しているからこそ、凛々子を泣かせるようなことをしたくない。
 俺の手で凛々子を幸せにしてやりたいと。

「好きだよ、凛々子」

 彼女の身体を抱き寄せて、そっと愛の言葉を囁く。

 ずっと言いたかった言葉。これからは惜しげもなく伝えていこう。

 凛々子のぬくもりを肌で感じていると次第に眠気に襲われ、俺もゆっくりと眠りに就いた。
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