政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
「やだ、やめてよ気持ち悪い!」

「気持ち悪いはないだろ」

「お兄ちゃんに頭をポンとされても、寒気かしかしないし」

 あんまりじゃないか? 昔はお兄ちゃん、お兄ちゃんと言って俺の後ろをついてきたというのに。

 カバンを置いてソファに腰かける。窮屈なネクタイを緩めていると、千鶴も俺の隣に腰を下ろした。

「話しは戻るけどさ、お兄ちゃん頑張ったね」

 まるで子供を褒めるような言い方に顔が引きつる。そんな俺を見て千鶴は笑った。

「だって本当のことでしょ? ヘタレで意気地なしだったお兄ちゃんが、凛々子ちゃんのピンチに駆けつけて、ベストタイミングで告白しちゃってさ。ある意味ずるいよねー」

「なんとでも言え」

 ぶっきらぼうに言うと、千鶴は含み笑いをした。

「だけど意地もプライドも捨てたプロポーズだったからこそ、凛々子ちゃんにお兄ちゃんが本気だって伝わったみたいだよ。……あんなお兄ちゃん、初めて見たって言っていたもの」

 いったい凛々子は千鶴にどこまで話したのだろうか。もしかして全部?
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