政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 そう思うと、零士君とのことになかなか前向きな気持ちになれずにいた。

 だけど周りは待ってくれず、結納に結婚式の準備と目まぐるしい日々が過ぎていき、今日を迎えてしまった。

 ここは結婚式を挙げたホテルの最上階のスイートルーム。

 広々とした浴室からも夜景が見渡せて、とっても素敵だった。でも当然景色を楽しむ余裕などなく、これからのことを考えると緊張とドキドキでおかしくなりそう。

 結婚式を済ませて宿泊先がスイートルームだもの。……するよね、絶対。

 半年前にもしたけど、だいぶ間が空いちゃっているし、あの時は失恋直後で投げやりになっていたところもあったし。

 だから改まってするんだと考えると、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなる。

 なんてことを裸のまま考えていたら、すっかり湯冷めしてしまい、寒さで身震いした。

 急いで下着をつけて、ふわふわのバスロープを羽織る。そして髪を乾かそうとした時、ドアをノックされた。

「凛々子、出た? だいぶ時間がかかっているけど、もしかしてのぼせたのか?」

「ううん、大丈夫。心配かけてごめん。髪を乾かしたら終わりだから」

 ドライヤーを手に取ってコンセントを入れると、同じバスロープ姿の零士君が入ってきた。

「よかった、なにもなくて。髪なら俺が乾かしてやるからおいで」

「え? あっ」

 零士君はコンセントを抜くと、ドライヤーを持っていってしまった。
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