政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
「早く俺を好きになればいい。そうしたら、世界で一番幸せにしてやるから」

 優しい顔で囁かれた一言に、ギューッと胸が締めつけられた。

 零士君とは婚約者といっても、お互いほとんど顔を合わせてこなかった。会うのは社交の場や、両親たちに言われてだったから。

 そんな数少ない中で会う零士君はいつも意地悪で冷たくて、彼に私は嫌われているとばかり思っていた。

 でも今はそう思わない。優しくて仕事に真摯に向き合っている真面目な一面もあった。

 私、零士君のことをもっと知りたい。

「好きだよ、凛々子。……好きだ」

 愛の言葉を囁かれるたびに願ってしまう。

 好きな人と結婚したいという夢は、零士君となら叶うかもしれないと。

 このまま一緒にいたら、私は零士君のことを心の底から愛することができると信じてもいい?

 彼の愛を一身に受けながら、何度も心の中で零士君に問いかけている自分がいた。
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