政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 零士君は外食してきてもいいし、デリバリーを頼んだらいいって言っていたけど、ひとりではそんな気分になれなかった。

 そして思ったの。早く零士君の仕事が落ち着いて、ふたりでゆっくり食事をとれる日がきてほしいと。

 昨晩のうちにご飯を炊いておいたし、きゅうりとナスも漬けておいた。
 鮭を焼いて味噌汁を作り、それとだし巻き玉子も焼こう。

 お母さんにひと通りの家事を教わっておいてよかった。料理も人並みにできるし。

 ただ、零士君の口に合えばいいんだけど……。

 不安と期待を入り混じらせながらだし巻き玉子を作り、味噌汁の具材を煮込んでいる間に洗い物をしていると、急に背後から抱きしめられた。

「きゃっ!?」

 びっくりして悲鳴にも似た声を上げると、零士君は可笑しそうに「おはよう」と言った。

「おはよう。でも普通に声をかけてほしかった」

 そう言うと零士君は私を抱きしめたままクスクスと笑う。

「ごめん、朝起きたら凛々子が隣にいないのが寂しくてさ。ちょっと意地悪をした」

 頬を摺り寄せてそんなことを言われたら、朝からドキッとしてしまう。
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