政略結婚から始まる蜜愛夫婦～俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない～

「あ、そういえば今日だったよな？　千鶴に会うって言っていたのは」

「うん、新婚旅行のお土産を渡してくるね」

　今日は千鶴ちゃんとランチの約束をしている。お土産を渡すのはもちろん、零士君のことで相談に乗ってもらうつもりだ。

「そっか、千鶴によろしく伝えておいて」

「わかったよ」

　零士君は私が作った料理をすべて食べてくれた。

　そして髪を整えてジャケットを着た零士君は、仕事ができる男の雰囲気を醸し出していて、すごくカッコいい。

　いつも私が寝ている間にそっと出かけていたから、玄関まで見送るのは今日が初めてだ。

　靴を履いて振り返った零士君に、「いってらっしゃい」と伝えた。

　すると彼は嬉しそうに目を細め、私に向かって手招きをした。首を傾げながらも一歩距離を縮めると、零士君は少しだけ背伸びをした。

　そして唇に触れた温かな感触。

　一瞬のことに目を閉じることもできなかった。瞬きさえできず、驚き固まる。そんな私を見て零士君はにっこり微笑んだ。