政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
「夢だったんだ、凛々子に、行ってきますのキスをするの。今日はいつも以上に仕事頑張れそうだよ」

「それは……よかったです」

 恥ずかしくてなんて言ったらいいのかわからず、敬語になってしまった。すると彼は声を上げて笑う。

「そんなに笑うことないじゃない」

 顔中が熱くなるのを感じながら文句を言うと、零士君は笑いをこらえながら「ごめん」と言う。

「仕事を頑張れるのは本当だよ。……じゃあ行ってくる」

「うん、いってらっしゃい」

 手を振って送り出すと、零士君も手を振り返して出かけていった。

 パタンとドアが閉まると同時に、身体中の力が抜けて座り込んでしまった。

「私、こんな調子でこれから生活していけるのかな」

 零士君と一緒にいると、ドキドキして調子が狂うんだもの。

 ため息をひとつ零し、家事を済ませて身支度を整え、千鶴ちゃんとの待ち合わせ場所へと向かった。



 千鶴ちゃんが選んだランチの場所は、表参道にある隠れ家的レストラン。フルコースを注文し、次々と運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。
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