溺愛予告~御曹司の告白躱します~
それでもなんとなく抵抗しないでいると、爽くんは話を続けた。
「半年一緒に働いて、俺を御曹司扱いしない女の人って珍しくて気になったからターゲットにしてみただけだった。特に好みの顔でも身体でもないですし」
「おいこら」
「それなのに、仕事では男に混じってガンガン働く先輩が、蓮兄のことになると途端にポンコツになる。傷付いて泣きそうな顔を見れば助けたくなった」
失礼なことを言われているはずなのに、どこか爽くんに口説かれるのはこれが最後になると感じて、終わりまで聞くことにした。
きっと、私が爽くんに見せられる誠意は、話をちゃんと全部聞いてきちんと断ることだと思ったから。
「風邪の時に料理作ってもらったのも初めてだった。他の男と二人で飲んでるってわかってて呼び出すのも、告白されたって聞いて嫉妬するのだって、全部莉子先輩が初めてなんだ」
ぎゅっと抱きしめる腕に力が込められた。
「莉子先輩が好きです。たぶん…初恋なんです」
キテレツな恋愛観とか、女癖が悪いとか、そんな事実は置いておいて。
きっと本気で言ってくれていることは私にも伝わってきた。
だから私も、本音で彼に答えを告げなくては。
「ありがとう、爽くん。…でも、私ね」
爽くんの腕から抜け出そうと顔を上げて距離を取ろうとした瞬間。
ドン!と大きな音を立ててフロントガラスが叩かれた。
車が揺れる衝撃に驚いて爽くんの腕の中で固まっていると、音を立てた張本人が運転席側に回って乱暴にドアを開けた。