溺愛予告~御曹司の告白躱します~
「佐倉から離れろ!」
水瀬は爽くんの肩を強い力で掴むと、運転席から引き摺り下ろす。
突然の水瀬の登場に驚きつつ、私も慌てて助手席から降りた。
「蓮兄には関係ないでしょ」
「なんだと?」
会社の裏手側にある駐車場。
社員以外の人目につくことはないものの、いつ営業車を使う社員がくるかもしれない場所。
社員用出入り口も近い。
そんな所で、水瀬帝国の王子ふたりが睨み合っているのはかなりマズイのでは。
なんだか一触即発の空気を感じて止めに入る。
「待って。仕事中。ね?」
時刻は午後三時。定時までは二時間半もある。
ちゃんとキリキリ働かないと給料泥棒もいいところだ。
「蓮兄は木島のお嬢様とデートでも何でもしてたらいいんじゃないかな」
私の制止も虚しく、爽くんが煽るように言葉を投げつける。
「何の話だ」
「今さっき一緒にいただろ?木島不動産のご令嬢と」
水瀬以上に私がドキリとしてしまい、爽くんに恨みがましい目を向ける。
それでも彼は私でなく水瀬と対峙しているせいで視線に気付かない。
「木島…、あぁ。どっかで会ったことあると思ったら、木島不動産の…」
「どっかでって…。何度もパーティーで顔合わせてるだろ」