溺愛予告~御曹司の告白躱します~

「お前じゃあるまいし、仕事に関係ない女の顔なんて一々覚えてられるか。確か社長の第二秘書なんて言ってたけど、ほぼ挨拶回りについていくだけで仕事なんてしてなさそうだし」
「まぁ、それは否定しないけど」
「彼女からは結婚式の招待状を出したって話を聞いてたんだ。爽のとこにも社長から話があるだろ」
「け…っこんしき…?」

二人の会話に口を挟めないでいた私だけど、思わぬ単語につい反応してしまった。

「あの人…結婚するの…?」
「らしいな」
「誰と…?」
「確か筒井銀行の頭取の息子だって言ってたか。車の音であんまり聞こえなくて」

水瀬の返答を聞くやいなや、私は力が抜けてその場にへなへなと座り込んでしまう。

「佐倉?!」

駐車場で急にぺたんと座ってしまった私に驚いて水瀬が駆け寄ってきてくれる。

肩に触れたその手の温かさと、さっき見た女の人とは何もなかったんだという安心感から、またぽろぽろと溢れてくる水分。


「…っだから嫌だったのに!」

添えられた手を振り払うようにブンブンと首を振る。

「やっぱり水瀬とは付き合えない」
「は?何で今『やっぱり』ってなるんだよ。嫌だったって何が?」

唐突に先日の告白に対する断りの返事をする私に、水瀬は驚きよりも不愉快そうに眉を顰めた。

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