溺愛予告~御曹司の告白躱します~
ずっと付き合ってた彼女すら、その価値だけに囚われてしまったのを見た水瀬はどれだけ傷付いたんだろう。
「そしたら、入社式で佐倉に会った。周りが俺の名字を意識する中、何も考えてなさそうに話しかけてきて」
「そ…その時の事は忘れて…!」
「はは!無理だよ。たぶん、…その時に惚れたんだ」
そんな馬鹿な。
あの黒歴史のどこに惚れる要素があると言うのか。
「わかるなー、その感覚」
唐突にログインしてきた声に驚く。
振り返ると可笑しそうな顔をしてこちらを見ている爽くんと目が合った。
「莉子先輩、俺がいること絶対忘れてましたよね。自分が仕事中だって止めたくせに」
「…や、あの…、ごめ…」
「おい、爽」
「だって蓮兄。俺が先に先輩と話してたんだよ?それを蓮兄が邪魔したから」
そうだ。車の中で話してたのが途中になってしまったんだ。
本当にすっかり忘れてしまった自分にも驚くし、爽くんにも申し訳ない。
「ねぇ莉子先輩。さっきの話の続き。しばらく、好きでいていいですか?」
きっとキッパリ断ろうとしていた私の気持ちなんて爽くんにはお見通しで、話の続きのタイミングを図ってくれていたんだろう。