溺愛予告~御曹司の告白躱します~
大きなライトグレーのソファと真っ黒なローテーブル。
床に敷かれた少し毛足の長いラグはグレーで、左側にあるダイニングテーブルも黒。
モノトーンで統一された部屋は家主にピッタリな雰囲気で素晴らしいと思いつつ、緊張で言葉が出てこない。
「座って」
「え?あ…」
「すぐにでも寝室連れていきたいけど。コーヒーくらい淹れるから」
ソファの横にドサリと鞄を置き、スーツのジャケットを脱いでネクタイを緩めながらニヤリと口の端を上げる。
一拍遅れて意味を理解した私が真っ赤になって目を見開いたのを見て満足したのか、笑いながらおしゃれなシステムキッチンへ消えていった。
駐車場での一件の後、何とか就業中だということを思い出し「そうだ、仕事しよう!」と鉄道会社のキャッチコピーよろしく叫ぶと、王子ふたりを放り出して営業部に戻った。
学生寮の営業の報告書を作成しながら、頭の中は水瀬に言われたことで一杯だった。
『嫉妬するのが辛いって言うのなら、しなくて済むように甘やかす。佐倉がいいなら付き合ってることも隠さないし、会社とか立場とか関係なくベタベタに可愛がる』
『たぶん、…その時に惚れたんだ』