溺愛予告~御曹司の告白躱します~
ひとつ意識してしまったらもう後戻りは出来なくなるのがわかっていたから、何重にも鍵を掛けてしまい込んでいた気持ち。
胸の奥底で燻っていた心の声を救い出してくれるのなら。
『ただの同期』という呪いのような呪文を解き、数多の鍵を開けられるのは、目の前にいる彼しかいない。
「…聞きたい」
隣に座る水瀬の袖口をきゅっと掴んで伝えると、「それはずりぃだろ」とため息を吐きながらも耳触りの良い低くて優しい声で話してくれる。
「…ほんとに、初対面からもってかれたよ。昔から『水瀬の御曹司』っていうのが俺にとって代名詞みたいなものだったから、それに興味がなさそうな佐倉にかなり救われたんだ」
駐車場でも言っていた。
私にとって強烈に印象に残ってしまっている黒歴史が、まさか水瀬にとって違う印象を与えていたとは。
「…ドン引きされてたと思ってた」
「まぁ、衝撃ではあったな」
その当時のことを思い出しているのか、水瀬がクスっと笑った。
さらに言葉を続ける。
「高校とか大学に上がって環境が一変するタイミングで、毎回家のことは故意に隠して生活してた。でもやっぱりどこかから嗅ぎつける奴はいて…。男も女も、そうだとわかるとみんな目の色が変わった」
少し辛そうに顔が歪む。
袖を摘んでいた指先を、そっと水瀬の手に重ねてみる。