溺愛予告~御曹司の告白躱します~
「独占欲凄すぎ。…あはは、先輩タコみたいに真っ赤ですよ?」
そりゃ真っ赤にもなりますよ。
高校生じゃあるまいし。社会人四年目にもなってまさか首に…。
顔を隠したらいいのか、首筋を隠したらいいのか。
タコ程赤くなれるんだから、あと六本手が生えてくれればいいものを。
ニヤニヤ近付いてくる爽くんに椅子ごと距離を取る。
これ以上からかわれてなるものか。
「そ、爽くん、学生寮の営業報告書って」
「出来てます。莉子先輩が攫われた金曜、俺残業して頑張ったんですよ?」
「そ…っ、あ、ありがとう…?」
確かに金曜の午後の私は使い物にならなかった自覚がある。
あのあと蓮が営業課フロアまで迎えに来たせいで報告書が途中だったのを爽くんが仕上げてくれたらしい。
ありがたいが一向に自分のデスクに向かう気配がない後輩にどうしたものかと悩んでいると、「莉子ー」と営業フロアでは聞き慣れない声が響く。
「あれ、亜美?」
「おはよう」
「おはよう、どうしたの?」
十八階にある総務課に所属している亜美が下の階に下りてくることは珍しい。
「明日の会議室の予約、A室を他のチームが使いたいらしくて。莉子達C室じゃまずい?」
「ううん、特にプロジェクターも使わないし。人数入ればどこでも」