溺愛予告~御曹司の告白躱します~

「あれだけ王子に大事にされてんだから、覚悟決めて愛されてたらいいのよ」
「亜美…」
「もっと言ってやって、木本さん」

急にこの週末ずっと耳にしていた声が聞こえ、驚いて勢いよくふり返った。

「わ、ちょ、なんでここに…」
「おはよう水瀬くん。この週末は楽しかったみたいで」
「まぁね」

亜美は蓮に意味深な笑顔を返すと「じゃあ莉子、お昼迎えに来るから」と手を振って営業フロアを出ていった。

そんな彼女に手を振り返すことは出来ずに呆然と見送り、なぜか私のデスク周りに集結した水瀬帝国の王子達を見やる。

「これ。ドリームカンパニーがうちに出す予定のアミューズメントパークの概要」

手に持っていた大きなファイルを私に差し出す。

いつものポーカーフェイスではあるけど、瞳の奥が笑っているのがわかるだけにムッと口を尖らせてしまう。

「……ありがと」

二十センチ以上差のある蓮の顔を上目遣いに睨みながらファイルを受け取る。ギリギリ聞こえるくらいの小声でしかお礼を言わないのは、私のせめてもの抗議だ。

資料を始業前にわざわざ届けてくれたのはありがたい。
今週中には生田化成に顔を出そうとしていたから、読み込む時間が出来た。

< 137 / 178 >

この作品をシェア

pagetop