溺愛予告~御曹司の告白躱します~
「今日は女子寮?」
「うん。今どきオートロックないのは厳しいって先方もわかってるみたいだし」
「佐倉のマンションは?オートロックあんの?」
「うち?うん、ついてるよ」
仕事の話かと思いきや、急に話題が私の部屋になり驚く。
「ちゃんとモニター付きのやつ?」
「…そうだけど。なんで?」
駅から徒歩十五分以上かかるという、もはや最寄り駅とはなんぞやという立地を我慢しているだけあって、我が家は防犯面もしっかりしている。
オートロックはモニター付きだし、エントランスにはちゃんと二十四時間録画式の防犯カメラも設置されている。
「いや、気になったから」
「なにそれ」
「防犯意識低そうだし」
「失礼な。オートロックなくたってピンポンされても誰彼構わず出たりしないよ」
ポン、と下行きのエレベーターがきた。
先程とは違い、無人の箱の中はシンと静まり返っている。
「水瀬は何階?」
「五階。朝からミーティング」
「例のモデルタウン?」
「そう。施設誘致で意見が割れてて平行線。また長くなりそう」
うんざりした顔の水瀬にクスッと笑う。
あまり愚痴を零すタイプじゃない彼がそう言うからには、本当にうんざりするほど長い会議になるんだろう。