溺愛予告~御曹司の告白躱します~
作りかけの資料を保存しパソコンをシャットダウンする。
足元に置いていた鞄と椅子の背に掛けていたコートを引っ掴むと、フロアに残る人に「お疲れさまでした」とおざなりに挨拶して会社を出た。
スマホを見るとご丁寧に親父から今いるであろう店のURLが送られてきた。
【莉子ちゃんと兄さんとカラオケなう。】
何が『なう。』だ、バカ親父!
さらに莉子からもメッセージが届いていたことに気が付いた。
【聡志パパと仁志パパにご飯連れてってもらうね】
【お父さんの話したらカラオケ行きたいって言うから行ってきます。仕事終わったら連絡してねー】
呑気なメッセージと共に、俺が以前気に入って使っていたパンダのスタンプが一緒に送られてきていた。
笹ではなく骨付き肉を口いっぱいに頬張っているパンダと、マイクを持ち目を閉じてうっとりと歌っているパンダ。
……なぜだろう。
俺が自分で使っているときはとても可愛いと思っていたのに、そこはかとなく腹立たしい顔に見える。
親父達が莉子に聡志パパや仁志パパと呼ばせていると知ったのは、両親に紹介して一ヶ月も経たない頃だ。