溺愛予告~御曹司の告白躱します~
「莉子先輩、さかな好き?」
10階にある営業フロアの一角に位置する休憩スペースでココアをふうふう冷ましていると、隣でブラックコーヒーを飲んでいた爽くんがポケットから取り出した封筒を渡してきた。
「なに?」
「水族館の特別招待券」
水族館?
あ、さかなってそっち。
よかった、うかつに『秋刀魚が好きです。でも、大トロのほうがもぉっと好きです』とか言わなくて。
心の中でホッと安堵の息を吐きながら封筒を開けると、中にはイルカがジャンプしている写真がプリントされたペア招待券が入っていた。
「友達の誕生日パーティーのビンゴで当たったの。でも俺、もう誘う女の子いないから莉子先輩にあげる」
「え?!」
驚いて隣を見つめたのは、招待券をくれると言われたからではない。
「誘う女の子…いないの?」
「うん。もういい加減やめようかと思って」
「ええっ?!やめられるの?あんなにとっかえひっかえだったのに?!」
休憩スペースとはいえ、職場に似つかわしくない言葉を大声で叫ぶ。