溺愛予告~御曹司の告白躱します~
テーブルの端でビールを飲んでいた水瀬が驚いた顔をしてこちらを凝視していた。
座敷に上る前に店員さんにレモンサワーを頼みおしぼりを受け取って、ひとつ開けてくれた水瀬の横に座る。
入社式に水瀬帝国の王子に馴れ馴れしく話しかけた黒歴史を知る同期たちは、私たちの男女を超えた仲の良さを知っていて、こうして同期会の時はいつしか隣に座るのがお決まりになっていた。
すぐにきたレモンサワーを一気に半分ほど飲み干した所で、水瀬が口を開いた。
「どうした?今日来ないんじゃ」
「問題!てーれんっ」
「いや、何…」
「今日は一体何の日でしょーか?」
「はぁ?お前もう酔ってんの?」
「チッチッチッチ、時間切れは一発芸ね。チッチッチッチ」
「なんでだよ。…三年目の記念日なんだろ?なんでこんなとこにいんの」
せいかーいとテンション高めに叫びつつ、水瀬に投げかけられた問題にどう答えようか思考を巡らせる。
『なんでこんなとこにいんの』
三年目の記念日だとウッキウキで帰っていった私が、なぜか一時間もしないでこの居酒屋の座敷に座ってレモンサワーを飲んでいる謎。
「謎はすべて解けてるんだよ。じっちゃんの名にかけて」
「……」
「真実は、いつもひとつ…」
「混ざってる混ざってる」