溺愛予告~御曹司の告白躱します~

お昼休憩の時間をかなり過ぎているとあって、今この社員食堂に人はまばらにしかいない。
空いているテーブルもたくさんある。

なぜわざわざ私の前に座るのか。そう言ってやりたいけど、なんとなく返ってくるセリフが予想出来るため、自衛のために口を噤む。

「…私、カレーは食べる分だけ混ぜる派なんだけど」
「今食べてんのは俺だろ」
「だってお皿全体が汚くなるじゃん。洗う人への思いやりだよ」
「じゃあ皿返す時によろしくって念じて返すよ」
「解せない」
「なんでだよ」


今日は約束の日。
朝イチで水瀬から【逃げるなよ】というメッセージと、例の殴りたくなる顔のパンダがこっちを見て指を指しているスタンプが送られてきた。

腹が立ったので【ご安心を。玉子様との約束を忘れたりはしておりません】とメイクしながら送ると、すぐに【誰が玉子様だ】とツッコミが返ってきた。

【あ、間違えました】とシラっとそれに返信してほくそ笑む。
こういうバカバカしいやり取りが好きなのだと改めて感じて朝からちょっといい気分だった。

【アナログで書き間違えるならともかく『たまご』って打って変換してるだろ】

【玉子と卵の違いって知ってる?】

【二度寝でもしてろ】

今朝のやり取りを思い出しクスクス笑っている私に怪訝な目を向ける水瀬。

< 24 / 178 >

この作品をシェア

pagetop