溺愛予告~御曹司の告白躱します~

カレーを食べているだけで絵になる男も珍しい。全部混ぜて食べるのはいただけないけど。個人の嗜好なのでこれ以上は黙っておこう。

そう思いながら小鉢のポテトサラダをぱくりと食べる。こんがり焼いたベーコンとブラックペッパーが効いている大人味のポテトサラダはとても美味しい。

「佐倉、タレついてる」
「え?」

もぐもぐと粗いじゃがいもとベーコンを咀嚼するのに必死だった私は、水瀬の言葉を理解し口元を隠す間もなく、伸びてきた彼の中指が自分の口の端を拭うのを唖然として見つめていた。

その中指が彼の口元にいく段になってようやく事の次第に気づき、口を開けたままピシッと固まってしまった。

「…っふ、子供かよ」

ぺろりと中指を舐めた水瀬の言葉はいつものツッコミ口調なのに、目が離せずにじっと見つめてしまっているその顔はお昼の社員食堂には到底相応しくないような妖艶さを孕んでいて。

ほっぺが痛いくらい熱を持っていくのがわかる。きっと耳まで真っ赤に違いない。

「赤い」
「…なにが」
「リップ。最近その色な」
「…新色買ったの。秋だから」
「へぇ」

唇を噛んでやり過ごそうとしている私をよそに、水瀬は気のない返事をして食事を再開する。

どんな強心臓をしてるんだ、こいつは。

それとも水瀬にとってはこのくらいなんでもないことなんだろうか。

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