溺愛予告~御曹司の告白躱します~
そう考えると、心の奥がチクリと痛む。
私はこれ以上真っ赤な顔を晒さないように必死に平常心を取り戻そうとして、今の一連の出来事も胸の痛みもなかったことにすることにした。
「あのパンダのスタンプさ、水瀬っぽくなくない?なんで買ったの?」
関東では珍しい赤だしのお味噌汁は、濃い味付けのポークソテーに負けずとても良い。
話題を変えたくてずずっとお味噌汁を飲みながらずっと気になっていた例のパンダのことを聞くと、なんでもないことのように答えが返ってきた。
「あぁ、あのパンダ?似てない?お前に」
「…は?」
似てる?私が?
あの人をおちょくったような顔をしているパンダに?
…どういうこと?!
「小憎たらしい顔とか」
「ちょっと?」
「ちんまりしててなんか可愛いし」
「……」
「だからお前用に買ってみた」
どういう意味だと詰め寄ってなじってやるつもりだったのに。
ふいに投げつけられた『可愛い』という言葉に心が大袈裟に反応し、咄嗟に言葉を返すことが出来なかった。
困る。
非常に困る。
こういう時、咄嗟にうまい切り返しが思いつくひみつ道具が欲しい。
冗談じゃなく切実に。