溺愛予告~御曹司の告白躱します~

とりあえず【ようかん】ともうバカバカしい会話を終わらせたくて送ると【勝った】という文字。

こういうところが好きだなぁと思う。
続けて殴りたくなるようなドヤ顔をしたパンダのスタンプが送られてきた。
次会ったら本人を殴ろうと決めてスマホを横にぽいと放る。


このバカバカしいやりとりをしていた相手は、水瀬蓮(みなせ れん)。
私が勤める水瀬ハウス工業に同期として入社した男で、名前から察せられる通り水瀬ハウス工業の経営者一族。
いわゆる水瀬帝国の御曹司。
副社長の息子であり、社長の甥である。

インターンシップにこそ参加はしていなかったものの、そこで既に副社長の息子が同期になるらしいと噂になっていた。

入社式で彼を見た時には色々な噂を聞いていたせいか、『はじめまして』というよりも『ようやくお会い出来ましたね』という自分でも謎の感情になった。

そのせいか、水瀬の御曹司として遠巻きに見ていた同期とは違い、むしろ初対面にしては馴れ馴れしい感じで話しかけてしまって彼をドン引きさせたのは今や黒歴史だ。


水瀬ハウス工業は建築事業と都市開発事業を二本の柱としている。
建築事業の中でも住宅系と建築系に分かれ、住宅系はその名の通り戸建てやマンションなどの企画、設計、施工、販売。
一方の建築系は商業施設や医療施設、法人施設の企画や設計、施工からリフォームまで行っている。

私、佐倉莉子(さくら りこ)は建築事業部の営業課に所属している。
一日中歩き回って営業をかけ、不動産会社や金融機関を回って情報を交換したり、担当した現場へ行き進捗状況の確認をしたり、施主へ訪問してアフターケアに努めたりと、なんともハードな部署だ。

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