溺愛予告~御曹司の告白躱します~
忙しさと自己嫌悪から食欲もわかず、夜は眠れなくなり。身体も心もボロボロになって、ついに職場で倒れて病院に運ばれた。
ただの過労で二時間の点滴が終われば帰れると言われたものの、職場に迷惑をかけてしまった自分が許せずにポロポロと涙が止まらない。
意地を張るのは限界だった。
馬鹿なプライドは捨てて、別れを選ぶ時が来たと働かない頭で理解した。
病院まで付き添ってくれた水瀬は、泣きじゃくる私の頭を無言でずっと撫でてくれた。
『よく頑張ったな』
『お前は悪くない』
『俺がそばにいるから』
乾いた大地に水が染み渡るように、低くて優しい声が私の心に入り込んでくる。
その手が大きくて温かくて、余計に泣けてしまったのを今でも鮮明に覚えている。
来週訪問予定の営業先へ持っていく資料を粗方作成し終え、時計を見るとあと数分で定時の十七時半を迎えようというところ。
周りを見渡せば、水曜日ということで既に帰り支度を始めている人も少なくない。
もうすぐ約束の時間。
逃げないと言ってしまったからには行かなくては。
水瀬に会うのにこんなに緊張しないといけなくなったのはいつからだっただろう。
彼と初めて会ったのは入社式。
インターンシップで一緒になった人達から、この会社は一族経営で、都内でも有数の建築学科に通っている同い年の御曹司がいるのだと聞いていた。
なんでも成績も優秀で、さらにはイケメンだと女子が騒いでいるのも耳にした。
ここにいる人達は全員ではないものの、一年後には共に働く同期になる。
グループワークで『建築とまちづくり』について話し合う中、『水瀬帝国の王子』というワードが多々出てきて、私は会ったこともない彼に同期としての親しみを勝手に感じていた。