溺愛予告~御曹司の告白躱します~
入社式で隣になったインターンシップでは見かけなかった男子に自己紹介をすると、彼こそが『水瀬帝国の王子』だった。
『あー!噂の水瀬帝国の王子!蓮って“一蓮托生”の蓮の字?私の座右の銘なんだ。同期だし正にだね。よろしく!』
色々噂を聞いていたせいで勝手に仲間意識を持っていて、ようやく会えたとテンションの上がってしまった私と違い、初対面で馴れ馴れしく声を掛けられた水瀬はかなり引いていたと思う。
切れ長の大きな目でじっと見つめられたのは、怒っていたのか呆れていたのか。今となってはわからないけど。
『…座右の銘が“一蓮托生”って微妙じゃね?』とツッコまれ、『運命共同体になってみんなで頑張ろうっていう良い言葉じゃん?』と返した私に呆気に取られつつも『変な女』と笑ってくれた。
その笑顔に当時彰人という彼氏がいたにも関わらず見惚れてしまったのは、最早人類である以上致し方ない反射反応だと思う。
どちらかといえばクールな印象を受けるのに、なんだかとても嬉しいことがあったみたいな、子供が見せるみたいな無邪気な笑顔。
初対面で王子と呼ばれるほどのイケメンにそんな表情を見せられたら、誰だって戸惑うし見惚れもする。
後々仲良くなったあとに橋本くんから『初対面のくせに面と向かって水瀬に帝国の王子とか言えんのはお前だけだ』って呆れられたけど、水瀬はあの私の突拍子もない発言のおかげで同期と壁が出来ずに済んだと、いつだったか二人で飲んでいた時に言っていた。
そんな私にとっては思い出すと恥ずかしくなる黒歴史な初対面のあと。
一年目は別々の事務所に勤めていたので、顔を合わせるのは三ヶ月に一度の頻度で開かれていた同期会のみ。
その頃、水瀬が席を外し、電話で彼女と別れ話をしている所に遭遇したことがあった。
聞けば高校の時からだというからかなり長い付き合いらしい。
なぜ別れることになったのかは聞かなかった。
二年目からは本社の営業課で一緒になり、同期会以外にも一緒にご飯を食べたり飲みに行く機会があった。
さらに彰人の浮気疑惑や決定的な別れを経て、予定が合えば水曜日に飲みに行くのはもはや定番のようになっていた三年目。
でも、ずっと同期だった。