溺愛予告~御曹司の告白躱します~

店に着く前から困り果てて言葉をなくし俯いた私を見て、水瀬は話題を変えることにしたらしい。

「学生寮、どう?」

あからさまな方向転換だったけど、仕事の話なのはありがたい。

先週エレベーターで会った時に行くと話していたから、気にかけてくれていたんだろうと思うと嬉しかった。

「うん。最初ほど頑なじゃなくなってきた。乗り気とは言わないけど、こっちの話も時間取って聞いてくれるし、一応気にしてはいるみたい」

今回請け負ったのは男子寮で、一人部屋と二人部屋が選べ、住み込みの寮母さんがいる昔ながらの寮だ。

築年数や耐震強度の問題で建て替えることになったが、まだ他に三つ寮がある。

そのうち二つは女子寮で、どちらも古い建物で常駐の寮長さんと住み込みの寮母さんはいるもののオートロックがついていない。

防犯や管理体制の面からいっても、オートロックや二十四時間録画式の防犯カメラはあったほうがいい。

そのほうが安心して寮に住めるし、親御さんだって大学に信頼感を寄せるだろう。

そこをうまくプレゼンしながらなんとか建て替えの話に持っていき口説き落としたい所。しかしまだまだ道は険しい。

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