溺愛予告~御曹司の告白躱します~
「でも、学生寮は契約取れたとしても私の手柄じゃないけどね」
「なんで」
「水瀬も知ってるでしょ?爽くんの出身大学だから。爽くんいなかったら、もしかしたらまともに話も聞いてもらえなかったかも」
「……」
決して卑屈になっているわけではないけど、やはりキャリアも駆け出しの私よりも、ほとんど年が変わらないのならOBの爽くんの話のほうが聞いてもらえたのは確かだ。
とはいえ私だってそこに甘んじていたわけじゃない。
女子寮の建て替えについての重要性は女性である私の方がより説得力を持って話を進めていけると自分を信じて仕事を進め、今では事務局のおじさん達は私の話にも笑顔で対応してくれる。
黙ってしまった水瀬にいらぬ心配をさせてしまったと慌てて弁解する。
何度か飲みながら『女であることの不利』を愚痴ってしまった私のことを気にしてくれているんだろう。
「あ、でも今は違うよ。ちゃんと私が担当者だって向こうもわかってくれてるし、爽くんも補佐に徹してくれてるし」
「……爽くん?」
だから別に悲観していったわけじゃない。
そう伝えたかったんだけど、どうやら水瀬が気になったのはそこじゃないらしい。
「え?」
「そんな呼び方してたか?」
いつの間にか下の名前で呼んでいたのが気になったんだろう。