溺愛予告~御曹司の告白躱します~

「ああ、水瀬とややこしいからやっぱり名前で呼んでって」
「…よく二人で組んでんの?」

なんか…空気が変だ。
ピリピリ、というか、水瀬がどことなくイライラしているように感じる。

こんな風に負の感情を表立って外に出す人じゃないから、余計に緊張感が張り詰める。

何度か飲んでいる中で、私が爽くんの教育係的な立場になったって言ったとこもあったはずなのに。
なぜ今さらそんなことを聞いてくるのかわからない。

「爽くん優秀だから私が新人指導でも安心なんじゃない?第二王子の水瀬ともうまくやってたし、私なら色んな意味で安心感あったんじゃないかな」

どうにかこの空気を払拭したくて、わざと笑って王子と呼んでみる。
そんな私の必死の方向転換には乗ってくれずに、尚も怖い顔を向けたまま畳み掛けてくる。

「俺、気を付けろって言わなかった?」

それはきっと爽くんの『女癖だけは最悪』な部分を心配しているんだろうけど。
気を付けろと言われても同じ部署なんだから関わらないわけにいかないし、そもそも言うほど危険な感じはしない。

「…別に、なにもないよ」
「まさか、ターゲットにされてないよな」

ギクリと身体が強張ってしまったのを水瀬が見逃してくれるはずもない。
はぁーと大きくため息を吐いて片手で顔を覆うのをただ見ているだけにはいかず、ありのままを話す。

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