溺愛予告~御曹司の告白躱します~

きっとどんな女の子だって絆されてしまうんだろう。例え片思いしている相手や彼氏がいたとしても…。


「そんな奴と組んでおきながら、大丈夫って言う佐倉の考えがわかんないわ」
「いやだって…仕事だし」
「仕事だろうと車に乗れば二人きりだろ」
「…そう、だけど」

そんな事言われても、爽くんの教育係は私なわけで。
必然的に営業先に一緒に行くから同じ車に乗るのは当然で、それは半年前まで同じ部署にいた水瀬にだってわかりきっていることなはずなのに。

「今さら名前で呼ばせるっていうのがもうあいつの手だろ」
「そんな、呼び方くらいで…」
「大体紛らわしいって言うなら、爽じゃなくて…」
「え?」
「…いや、なんでもない」

何か言いかけた言葉を飲み込むなんて水瀬らしくない。気になって顔を見続けたけど、それについてこれ以上話すことはないらしい。

どこからともなく焼き鳥の香ばしい匂いが漂ってきた。

この辺りに焼き鳥屋さんなんてあったかな。新しく出来たんだろうか。
レモンチューハイが水みたいに薄くないなら行ってみたいな。

ちょうどお腹も空いてきたし、この香ばしい匂いに人間は逆らえないと太古の昔から相場が決まっているのだ。

「佐倉」
「ん?」

焼き鳥の匂いに気を取られて油断していた。
ここ最近水瀬と話す時に張っている無味無臭のバリアを張らずに対峙してしまった。

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