溺愛予告~御曹司の告白躱します~

気付いたときにはもう遅い。

イケメン王子のまっすぐに見つめる視線は時として凶器になる。
ある程度心の準備をしていてもダメージを食らう端正な顔立ちを持つ彼が、真っ直ぐに私を見下ろしている。


「お前、好きなやついるの?」


心臓が痛みを伴うほど激しく鼓動を刻む。
その視線は逃さないとでも言いたげに私に鋭く刺さり、私にも逸らすことを許さない強さがあって。

今更ながら必死に心のバリアを張って思考を巡らせる。

『好きなやついるの?』

それは爽くんのターゲットに私が選ばれてしまったから浮かんだであろう疑問。

付き合っている恋人というものが彰人と別れて以来いないことは、よく飲みに行く水瀬にはわかりきっていることで、片思いの相手がいるのかどうかという確認なんだろう。

私に質問を投げかけ答えを待っている水瀬の顔に、少しだけ焦りが滲んでいるように見えるのはきっと私の自惚れで。
期待しそうになる自分を戒めなくてはならなかった。

いや、期待もなにもない。
私は何も望んでなんかいない。
平和に過ごしたい。恋なんかいらない。
焼き鳥バンザイ。

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