溺愛予告~御曹司の告白躱します~
「俺が部屋に行っても上げないのに、爽の家には行くの?」
いつかのちょっとした会話を引き合いに出す水瀬の考えていることがわからない。
たとえ話と、今現実に病人の手伝いをするのでは意味が全く違うのに。
「水瀬、何言ってるの?全然違う話でしょ」
「……あいつだから?」
「え?」
「爽だから、そこまですんの?」
水瀬が何を言っているのかわからずに、鋭い視線に怯みつつ見つめ返す。
お酒が入った頭を必死に働かせて、彼が私に何を言いたいのかを掴もうともがく。
水瀬が暗に言いたいことを否定するように、なるべく冷静にいようと心を落ち着けて口を開いた。
「今一緒に動いてる一人暮らしの後輩が風邪を引いて、電話で手伝いを頼まれたら、私は爽くんじゃなくても買い物くらい手伝うよ」
「…あいつが、社長の息子じゃなくても?」
放たれた言葉に大きく目を見開く。
頭が真っ白になるという体験を初めてした。
まさか水瀬がそんなこと言うなんて思わなくて、投げつけられたセリフを理解するのに時間がかかった。
ようやく理解したその一言は、私の水瀬への信頼をズタズタに踏みにじるには十分すぎて、すぐに反応することが出来なかった。