溺愛予告~御曹司の告白躱します~
「いやわかんないけど。爽さまって呼んだり?似てないモノマネも似てるっておだてたり?」
「あはははは!はーもうやめて、莉子先輩といるとホント笑える。熱上がりそうです」
喜んで良いのかバカにされているのか。
どちらにしても熱が上がって辛くさせてはここに来た意味がまるでない。
「じゃあ私そろそろ」
「莉子先輩」
お腹を抱えて笑っているかと思いきや、急に真面目な顔で私を見つめる。
その瞳はやはりどこか水瀬に似ていて、思わずドキリとしてしまった。
「俺ね、子供の頃からいずれ親の会社に入って、親が決めた相手と結婚して会社継ぐってわかってて」
話しながら爽くんはぺり、と額に貼られていた冷却シートを剥がした。
「でもやっぱ一生一緒にいる結婚相手から好かれないって問題だなってガキの俺は考えて。どんな相手だろうと俺に振り向かせられればいいんだって結論に辿り着いたんです」
何を言わんとしているのか何となく察して、私は手にしていたペットボトルの蓋を開けてお茶を一口飲んだ。
「将来の見合い相手も、そうやって俺に惚れさせられればいい。そう思ってずっとあんな恋愛ごっこをしてきた」
淡々と話す内容は思いの外ショッキングで、やはり御曹司は面倒なものなんだと思った。
爽くんが少しチャラい外見に反して真面目だというのは、この半年一緒に仕事をしていればわかる。
それがなぜあんなキテレツな恋愛観になったのだろうと疑問ではあったけど。
まさかこんな捻くれて拗らせた思考回路だったとは…。
要約すれば、今までの女の子たちとの恋愛は、すべて将来の結婚相手の子を自分に惚れさせる練習台だと言っているのだ。
驚いて何も言えない私に向かって、爽くんは苦い笑みを零した。
「こんなこと…初めて人に言った…。やばい、本気になりそう…」