溺愛予告~御曹司の告白躱します~
それならいっそ、私が担当を降りたほうが双方気持ちよく仕事が出来るのではと昨晩眠れない頭で考えた結論だった。
今までの生田化成とのやりとりを纏めた資料のファイルを用意していると、ふと隣に人の気配がした。
「おはようございます」と挨拶をしようと椅子を回転させて右側を振り仰ぐと、そこに立っていたのは半年前にこのフロアに別れを告げたはずの水瀬だった。
「おはよう」
「……なんで」
「話がある。会議室取ったから、ちょっと来て」
そう強引に連れられてきた同じフロアにある小さな会議室。
何がなんだかわからないまま向かい合わせに座らされた。
水瀬からは昨日の気まずさは何も感じられない。ついでに呪いの効果も。
しかし大声でなかなかの呪いの言葉をぶつけた自覚がある私は、今この密室でふたりきりの状況はかなり気まずい。
なぜ呼ばれたのか。
何の話があるというのか。
まさか会社の会議室でこの前の焼き鳥屋の続きでもないだろうが、他に話というのが思い当たらずそわそわしてしまう。
「佐倉」
「は、はい」
なぜか敬語で返してしまった私に怪訝な表情を向けながら、水瀬がいきなり本題に入った。