溺愛予告~御曹司の告白躱します~
彼氏を振ってでも一ヶ月水瀬くんと火遊びがしたいのか、自分だけは水瀬くんを変えられると思うのか、私には歴代の彼女たちの気持ちを微塵も汲み取ることは出来ず、生暖かい目で見守ることにしている。
「だって俺、今は莉子先輩に夢中だし」
全くもって嬉しくない宣言を就業中にニコニコされた。
飲みきったココアの紙コップを足元のゴミ箱に捨てて、彼の言葉をやり過ごす。
キテレツな恋愛観の真偽を直接本人に聞いたわけではないけど、これだけ大きくなっている噂を否定しないで遊んでいる様子を見るに事実なんだろうと思う。
それならば、私は彼の『お相手をする条件』に当てはまらない。
大学時代からずっと付き合っていた彼氏ときっちり別れたのはもう一年以上も前。
それ以来、恋愛とは距離をおいて仕事一筋で走ってきた。
なぜそんな私にちょっかいを出し始めたのかと疑問に思わなくもないが、王子のお戯れだと基本放置している。
二週間ほど前に『次は莉子先輩にします』なんて言い出したときには驚いたし頭痛もしたけど。
チャラい冗談のような言葉を投げかけられる程度で特に実害はない。
そのうち飽きて、彼氏とラブラブな可愛い女の子を見つけてそちらに行くだろうと思っている。
「野原くん、十分後に出るよ」
「ちょっと。しんちゃんキャラ定着させようとすんのやめてください」
「ふふ、水瀬くん。ちゃんとほっぺ冷やしたら準備してね」
「んー…、蓮兄が企画に行ったからってやっぱり紛らわしくないですか?爽でいいです」