溺愛予告~御曹司の告白躱します~
周りからの質問攻めに苦笑しながらも、やはり嬉しそうにお相手との馴れ初めを話している亜美はどこから見ても幸せそう。
「優しい人だよ。彼、転勤ばっかりだから、私が辞めるか単身赴任の二択しかなくて。それならやっぱり一緒にいたいし」
クールだと思っていた亜美の照れた表情に、同じ女ながら見とれてしまう。
そんな私の視線に気付いたのか、亜美が私に話を振ってきた。
「莉子は?前の彼氏と別れてから何もないの?」
飲んでいたレモンサワーで溺れそうになったのをごまかしつつ「何もないよ」と小さな声で返す。
「えー?営業の第一王子が莉子にご執心だって聞いてるけど?」
ニヤニヤしながら投げかけられた言葉に、今度こそレモンサワーを噴いてしまった。
「ちょっと!きったないな!」
「ごほっ、な、なにそのご執心って…」
「社長の息子の水瀬爽くん?ずっと莉子にベッタリらしいじゃない?」
「あー!それ私も聞いた!」
爽くんのキテレツな恋愛観はもはや社内で知らないものはおらず、隣を歩く女の子が一ヶ月サイクルで替わるのに誰も驚きはしない。
そんな彼が今は誰も隣に置かず、私にくっついているらしいと専らの噂らしい。
「…仕事だよ。今、都市開発と合同のプロジェクトになって忙しくて」
「それにしても!第一王子の莉子を見つめる目がマジだって」
「いやいやいや…」