溺愛予告~御曹司の告白躱します~

また振り出しに戻ってしまった。
あーれーとすごろくのスタート地点に飛ばされた気分。

…あれ、王子達って。
それは爽くんのことだけじゃなくて水瀬のことも含まれてる?

でも水瀬と気まずくなったりというのは当事者である私達と爽くんくらいしか知らないし、亜美が言ってるのは仕事のことも含んでのことなんだろうか。

いずれにしても提供できる面白ネタなんて持っていない。

本日の主役である亜美の無茶振りに戸惑っていると、入り口がわずかに騒がしくなる。
私も亜美もそちらに視線を向けた。

「お疲れ」
「おー水瀬、お疲れー。間に合ったな」
「悪い、遅くなった」

掛けられた声に答えながら革靴を脱いでいる。
取引先との打ち合わせだったからか、ネクタイも緩めずにピシッとスーツを着た水瀬が座敷に上がってきた。


同期会の時、いつも水瀬はテーブルの一番端に座る。
今日も水瀬の指定席は空いていて、その隣に私は座っている。

もう三年以上この定位置なため、何を意識しなくてもこの座り位置に落ち着くのだ。

当然のように私の隣に座り、用意されていた未使用のおしぼりで手を拭く。

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