溺愛予告~御曹司の告白躱します~

「水瀬くんはさすがだわ。莉子、見習って」
「ごめんって」
「佐倉なにやらかしたの」
「私そっちのけで橋本くんたちと仕事の話で盛り上がってた」
「お前って…」

先程の所業を告げ口され、呆れて笑う水瀬の視線に小さくなる。

「ふふ。だからね、罰として莉子に噂の真相を聞いてたとこ」
「噂?」
「ちょっ、亜美!」

私を間に挟んでの会話を慌てて止める。

この話題だけはタブーなのだ。
今ここで爽くんの話題を出したくない。

そんな私の切なる願いが何も知らない亜美に届くはずもなく、あっさりとそのタブーが破られる。


「莉子と一緒の営業にいる水瀬くんの従弟、ついに本命が出来たのかってすごい噂になってるでしょ?だから真相を聞き出そうと思って」

亜美の楽しそうな思案顔とは裏腹に、水瀬の眉間には居酒屋の伝票が挟めるんじゃないかというくらい深く皺が刻まれた。

「…へぇ、本命?」
「水瀬くんは知らない?従兄弟同士ってそういう話しないの?」

ちょいと亜美さんや。
水瀬の表情に気付きませんか。声が一段と低いのが聞こえませんか。

< 88 / 178 >

この作品をシェア

pagetop