溺愛予告~御曹司の告白躱します~
とはいえ水瀬帝国の王子だとからかってはいても、別に生きている世界が違うとは思わない。
特に今は一社員として働いているし、入社式での初対面から“御曹司だから”と特別視する気持ちは私には一切なかった。
だから同期として気のおけない関係を三年以上も続けてこられた。
でも、恋愛だけは別だと思っている。
この水瀬ハウス工業は一族経営の会社。
彼は将来的にはトップか、それに近い役職に就くのを約束されている。
そんな人の相手には、やはりそれなりの人があてがわれると思うのは当然のこと。
爽くんも言っていた。
自分はいつか親の決めた相手と結婚するだろうと。
私には割り切った関係は無理。
いずれ違う人と結婚するだろうとわかっている人と付き合っていけるほど、たくましい神経はしていない。
もう恋愛で相手を疑って嫉妬して疲弊するなんてこりごりだ。
「…なにもないよ」
そう。
なにもなかった。