あの夢の続きをもう1度描けたら
信じられないが、柚子にそんなこと言われたら期待してしまう。
「だってよく考えてみなよ? 湯河くんは女子と全く話さないって有名なの」
「うん、でもわたしも最低限度だったよ? 多分」
「じゃあ……笑った? あの人無愛想で有名なのよ?」
「……それは、うん、まあ」
「ほらっ! やっぱり!」
柚子が興奮している。
可愛い女の子モードを演じる柚子はとてもミーハーな性格に変わるのだ。裏の性格を知っている私は、どう反応すればいいのか困ってしまう。
「……でも、違うと思うけどな」
だってあまりにも昨日の会話は、日常のひとコマとして片付けられるほど普通だった。
柚子が言うにはその日常会話も奇跡だというのだが……あり得ない。
絶対何か事情があるに決まってる。
例えば、わたしに憧れてここの高校を選んだとか……ダメだ、そういう答えを考えたことすらおこがましいよ。
この場にいないトモくんに謝りたくなる。
何か反論はしたいけど、うまく言葉が出ないことにモヤモヤしてると始業のチャイムが鳴った。
「あ、じゃあ席座るわ!」
「ちょっ、雛乃!」
わたしは逃げるかのように、席に座った。