あの夢の続きをもう1度描けたら
え……?
わたしが知っているお兄ちゃんとは全く繋がらない忠告に耳を疑う。
お兄ちゃんが、お父さんを、殺す……?
そんな冗談、誰が通用すると思っているの……?
「ヒナノ様が信じられないのもわかります。ですがお願いです。ずっと独りで苦しんでいたジン様をどうか救ってください……っ」
「そんなこと言われても……! わたしは信じたくないです!」
「疑うようのない真実です。ですが残念ながら僕は消えてしまいます。トラオムの民と共に。だからあなたに頼んだのです、ヒナノ様」
「……」
切願する茶髪さんにとうとう何も言えなくなった。
「ジン様の長年の願いが叶った今、あの方は自らを殺そうとしています! ヒナノ様、どうかお願いします!」
長年の願いって……?
本当の父親を殺すって何……?
浮かんでくる疑問を取り払う暇もなく、茶髪さんがどんどん遠のいていく。
「待ってください! あなたの名前は……っ」
わたしが呼び止めて、茶髪さんは儚げに微笑んだ。
「僕は……ザラームと申します」
──ジン様の世界一の味方です。
そして、茶髪さん……ザラームさんまでもが闇に吸い込まれて消えてしまった。