あの夢の続きをもう1度描けたら
よかった……間に合った。
まずはそのことに安心した。
だけど、包丁で殺すつもりなのだというお兄ちゃんの疑い強いものが事実であるのが嫌でも突きつけられる。
足がすくんでしまいそうだが、それでもなんとか奮い立たせた。
「お兄ちゃんっ!!」
「……!? なんで雛乃がここに……!?」
あんなに温厚なお兄ちゃんが声を荒げて狼狽える。
その声は怒鳴っているようにも聞こえてしまう。
怖くなるあまり涙がこぼれてしまいそうだった。
『ずっと独りで苦しんでたジン様を救ってください……っ』
脳裏にザラームさんの声が過ぎる。
……泣きたかったのは、お兄ちゃんの方なんだ。
ここで泣くわけにはいかない。
わたしは忍足でお兄ちゃんに近づいた。
だけどお兄ちゃんが後ろを振り返った。