あの夢の続きをもう1度描けたら

***


傷も作らなかったので罪に問われることはなかった。

殺人未遂罪でも訴えられることも可能だったが、あの人の奥さんが免除してくれた。


あの後。

雛乃に諭されて救われた俺は殺すことを断念した代わりに、週刊誌に今までのことを全て報告した。

そして前代未聞のスキャンダル記事が暴露され、あの人のアイドル人生は呆気なく幕を閉じた。

おかげさまで真実を知った奥さんは離婚を決意して、あの人から去っていったのだ。


殺さずとも、あの人に社会的制裁を加えられた。


どうしてこの方法を思いつかなかったのだろうと呆れずにはいられない。



本当に全てが落ち着いてから、俺は家族に今までのことを包み隠さず話した。

トラオムのことも全て。


「そうだったんだね……っ」


雛乃は泣いていた。

両親も真白さんも涙ぐんでいて、胸が締め付けられた。


「良かった……っ、迅に何かあったら私……」


真白さんに抱きしめられて、俺はもう一度泣く羽目になった。

そんな俺達を見ては、雛乃はぐしゃぐしゃな笑顔を浮かべたのだ。

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