あの夢の続きをもう1度描けたら

今こうして地上を踏んで歩いていけるのも、

家族や友達に恵まれているのも、


全部全部……雛乃のおかげだ。



「お兄ちゃん! おかえり!」

「……ただいま、雛乃」


希望の魔法使いの名前を呼んで、頭を撫でる。

照れ臭そうに笑った雛乃に何度でも言いたくなるこの言葉を贈ろう。



「ありがとう」

「またお礼言うの? わたしの方こそありがとうだよ!」

「ははっ」

「今のに笑うところあった……? ただお礼を言っただけなのに」


雛乃はそういう人だったな。

拗ねているのか唇を尖らせる妹が可愛い。


これは完全なるシスコンだな。

でも雛乃だから仕方ない。


「ごめんって。なんでもないから」



俺は全てを受け止めきれず、投げやりな殺意を覚えた。

ひとりで苦しんで、あの人を殺して、あの人の残したもの全てを消そうとした俺を。


見つけだして、救ってくれてありがとう。


おかげで、少しはこの血を持つ自分を許せるようになった気がする。



こうして俺はトラオムと魔法を失ってしまったが、心は雨に洗われた空のようにみずみずしく澄んでいた。




꙳✧

˖°



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