あの夢の続きをもう1度描けたら
「お兄ちゃーん?」
呼びかけながらドアをノックしてみるが、部屋の向こうからは何も反応が返ってこなかった。
あれ……お兄ちゃんって出掛けてたっけ?
朝ご飯の時は特にそんなことは言ってなかったはずだ。
まあいいや、後で謝れば大丈夫だよね。
ごめんなさいと心で謝りながら、わたしは部屋の中へと進んでいった。
部屋には誰もいなくて、わたしは窓際にある机の方へ真っ先に行く。
「お、あったあった」
机の上にある小さな勉強棚に厚い英和辞書を発見。
それを手に取って、部屋から出ようとした時だった。
──ガチャリ
下の階から玄関の開く音が小さく聞こえた。
窓から外の様子を窺えば、お兄ちゃんが歩いていくのが見える。
なーんだ、これから出かけるのか。
ぼんやりとしながらもお兄ちゃんを見ていくと、お兄ちゃんは家門から出ずに、庭がある方に曲がっていった。