あの夢の続きをもう1度描けたら
「あ、そこはね……」
「……おお、なるほど!」
柚子に見惚れて、反応が少し遅れたことに気づいたのはわたしだけじゃないだろう。
話がまとまって、彼が席から離れるのを横目に「お疲れ様」と声をかけたら、彼女は「ほんと、めんどくさ」とため息混じりに嘆いた。
「柚子って器用だよね。ずっと前から思ってたけど、よく咄嗟にキャラ変えられるね」
「それ言うのほんと好きだよね。それしか出てこないの?」
呆れて物言っただけなのに、毒と共に返されるこの理不尽さ。
「うるっさいな! 柚子がすごいだけなの! 素直にありがとうでも言ってよ!」
「はいはい、ありがとう」
「……くそっ」
言葉遣いが一瞬乱暴になったのは、ご愛嬌ということで。
喧嘩と言ってもいいくらい言い合ってるのに、こんなにも仲がいいだなんて、まったく変な話だ。
柚子と知り合ったきっかけは、かなり衝撃的で今でも覚えている。
わたしが中学二年生の時のこと。
ある日の放課後、わたしが忘れ物に気づいて教室に戻った時だった。