あの夢の続きをもう1度描けたら

まだ時間があるから、のんびり歩きながら柚子を待っていよう。


「あ……」


考えながら歩いたせいか、ペンケースを落として中身がばらけてしまった。


教科書を床に置いて、しゃがみながらシャーペンやら蛍光ペンやらを詰めていく。

あとは消しゴムだけだが、使いすぎて丸形になった消しゴムはころころ遠くに行ってしまった。


立ち上がって消しゴムを取りに行こうとしたら、消しゴムが誰かに手によって拾われる。


そしてその手の中にある消しゴムをわたしのペンケースに入れてくれた。


「あ、ありがとうございます!」

「……いえ」


教科書とペンケースをまとめて持ってから、立ち上がってお礼を言えば、知らない男子生徒と目が合った。

切れ長の黒い瞳が印象的な男子で、冷めた声だなと思った時には、彼はすたすた歩いて行ってしまった。


「雛乃! あと1分でチャイム鳴るよ!」

「うそ! 急がなきゃ!」


その姿を眺めていると、後ろからやって来た柚子と合流して、走りながら目的地へと向かったのだった。

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