あの夢の続きをもう1度描けたら

意識がはっきりしていくと、鼻が敏感になり、キッチンの方から美味しい匂いが漂ってくる。


この匂いは……カレー!


辛いものが大好きなわたしは駆け足でリビングの方へ向かったのだった。


「あれ?お兄ちゃんは?」


わたしはカレーを頬張りながら、ひとつの空席に視線を向ける。

ここにはわたしとママとパパがいるけど、お兄ちゃんがいない。


「レポートを書かなくちゃいけないからって、友達の家に泊まるって」

「そうなんだ」

「……(じん)が大人になるって実感するわね。いつか結婚もするのかしら……なんか寂しいわ」

「迅はもう大学生だからな。あっという間だな」


迅はお兄ちゃんの名前。

イケメンって名前までカッコいいもんだな、と思わずにはいられない。

お母さんとお父さんはお兄ちゃんの成長をしみじみと語り、笑みをこぼしている。


この家族はみんなお兄ちゃんのことを誇らしく感じている。

< 54 / 316 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop