純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
これだけでは足りない。もっと、彼女を感じたい。自らの手で、蕾のままの花をみだらに咲かせたい。
時雨は一旦唇を離し、皿を置いて睡を立たせる。
「食事はあとにしよう。空腹なんて忘れさせてやるから」
仕事をしたあとで腹が空いているに違いないと思ったが、高ぶる欲求を抑えられそうになく、強引に彼女を抱き上げた。
ところが、睡は思いのほかしっかりと首に腕を回してくる。
「もうすっかり忘れていました……胸がいっぱいで」
そんなふうに言って抱きついてくる仕草からは、彼女も愛を欲しているのであろうことが伝わってきて、時雨の熱をさらに滾らせる。
「じゃあ、心置きなく君をいただく」
甘く囁いて睡の額に軽く口づけ、階段を上った。
寝室に入ると窓から庭のイルミネーションが見え、下ろされた睡は窓際に駆け寄った。そこに貼りついて歓喜の声を上げ、想像通り子供のような反応をしている。
それを微笑ましく思いながら、時雨は彼女が外に釘づけになっている間にゴールドのネクタイピンを外す。肩羽の蝶を象った繊細な造りのそれは、時雨にとってかなり思い入れのある品だ。