純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

「もっと凛とした大人の女性になりたい……」


 人混みの中なので聞こえないだろうと、ぽつりと呟いた。しかし時雨にも届いたらしく、睡の耳に顔を近づけてくる。


「十分成長しているぞ。身体のほうは特に、少し触れただけでぐっしょり濡れ──」
「意地悪!」


 あられもないことを囁かれ、睡は赤面して時雨の顔をぐいっと押し退けた。彼はおかしそうに笑いをこぼし、「悪い」と一応謝る。

 クリスマスの夜に結ばれてから、すでに何度か身体を重ねた。彼との行為は想像以上に満たされるものだと思い知ったが、同時に自分にもこんなに淫らな部分があったのかと羞恥に襲われる。

 またからかわれてしまったと、睡は少し屈辱的な気分で口を尖らせた。相変わらず意地悪をする時雨だが、睡を見つめる瞳は先ほどからずっと愛おしそうに細められている。


「成熟していく君ももちろん素敵だろうが、俺は睡の子供みたいに純粋なところも好きになったんだから、自分を否定するなよ」


 打って変わって真面目な調子で言われ、睡は一瞬きょとんとした。彼の言葉はどんな自分も認めて愛してくれているのだと思えて、心の棘はどんどん丸くなっていく。
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