純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
頬を染めて「はい」と従順に頷く自分はやはり単純だなと、呆れた笑いがこぼれた。
時間はかかったがなんとか本殿にたどり着き、今年もいい一年になるよう参拝をして再び参道に戻る。ゆっくり歩きながら、ふたりはたわいない会話をする。
「帰ったらお雑煮を食べましょう。吉原でもお正月は皆で集まって食べていたんです」
「へえ、雑煮は俺も好きだ。というか、睡に作れるのか?」
「それが作れるんですよ」
雑煮のような簡単なものは、菊子や有美に聞かなくても前から作れたので胸を張る。
時雨はくすっと笑い、「すごいな」と褒めてぽんぽんと頭を撫でる。やはり子供扱いされている気がするのは否めないが、それより今度こそ成功させようと睡は意気込んでいた。
そうして境内を出る頃、時雨が道の両側にずらりと並んだ露店を指差す。
「帰る前に、少し露店を見ていかないか?」
「見たいです!」
実は来たときから興味津々だったので、二つ返事で応じた。昔から祭りの屋台や露店を回るのはわくわくして好きなのだ。